幾久しく、君を想って。
真剣な表情で尋ねられ、彼が一瞬たじろいだ。


「好きだよね?だって、バレンタインデーにハート型のイチゴくれたじゃん!あれ、すげー高いってクラスの子が言ってた!だから絶対に本命イチゴだよね!?」


「た…拓海?」


クラスの一体誰にそんな話をしたのか。
聞き出すのも恐ろしくなってきて、あんぐりと口を開けた。



「そうだよ」


質問に合わせて、松永さんが真剣な顔で答えた。
拓海はニコッと微笑み、「やっぱり!」と声を上げる。


「今の声、お母さんに似てる!」


松永さんはそう言って笑い、私達の側に近づいてきた。

私の空いている方の手を取り、拓海の前でぎゅっと握りしめた。


「俺を…君達の仲間に入れてくれない?」


家族という言葉を使わず、仲間と言った。
拓海に受け入れて貰い易いように、彼なりの配慮をしたつもりだろう。



「うん、いいよ。…でも、一つだけお願いがある」


「お願い?」


「お母さんのこと、ずっと好きでいてあげて。嫌いになんかならないと約束してくれたら、仲間に入れてあげてもいいよ」


大真面目な顔で話す拓海のことを見つめ直し、呆れつつも、ぐっと熱いものがこみ上げた。

私が夫と離婚した原因を両親から聞かされたことがあるのかもしれない。




「……約束するよ。絶対に嫌いにならない」


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