幾久しく、君を想って。
断言した彼は、空いている方の手の小指を立てた。

「男同士の約束をしよう」と言いだし、拓海は意を決したように指を絡めた。



「僕もお母さんのことをずっと好きでいる!」


にっこりと笑い合う二人のことを見ていたら、熱い思いが胸の奥から膨らんできて、それが一気に涙へと変わった。


ぼろりと大粒の涙が零れ落ちて、それを見た拓海が心配そうに顔を覗く。

松永さんは私の肩を抱き寄せ、後ろ頭を撫でながら「よしよし…」と優しい声で囁いた。


肩に額が触れた瞬間、これまでのことが走馬灯のように蘇ってきて………



「……ううっ…」


唇の端から声が漏れ出た。



初めて松永さんが職場のドアを開け、「COーOPでーす!」と言った時の驚きから始まり、「新しい栄養士です」と挨拶をしたら、「班に入りませんか?」と誘われた。

丁寧に説明をしてくれて、毎回美味しい物はコレですとアドバイスをくれた。


彼が配達に来て直ぐに交わす言葉が楽しみだったこと。たわいも無い会話の数々にいつも心がホッとしていたこと。


『アラフォー部会』で会った時、顔見知りになれていて良かった…と安心して、送ってもらいながら初めて拓海のことを気易く喋れた。


映画を観た後で喧嘩腰になってしまった私を鎮めるかのように自分の考えを述べたり、別れた夫のことを話しながら、悔し涙を受け止めて貰った。


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