幾久しく、君を想って。
父は門扉の側までやって来ると、泣いているのは私かどうかを確かめるように目を凝らした。


「……やっぱり真梨か。どうした。何かあったのか?」


心配そうな声を出し、ちらっと彼に視線を向ける。


「あ…」


くっ付いていた体を離し、慌てて事情を説明しようとしたら……



「おじいちゃん!」


コートの裾を握りしめていた手が離れ、拓海が後ろを振り返った。
父は孫の存在に今気付いたらしく、「たっくんもいたのか…」と呆れる様な声を発した。


「そうだよ!お母さんと一緒に出かけてたんだ。美味しい料理たくさん食べてきたよ!」


嬉しそうに近寄る孫を門扉の中に入れ、その子よりも私の方に振り返る。



「そうか。それで、その人は?」


松永さんを視界に入れながら目線は私にだけ向けられた。


「…この人は会社関係者で……」


うまく説明できるだろうか。
まだ付き合っているとも言い難いし、ただの知り合いです…とも言えない。


「初めまして。松永と申します」


次の言葉に詰まっていると、彼が自分から自己紹介を始めた。


「宮野さんの職場に配達へ行く生協の職員です。今夜は会社関係者の集まりに親子で参加して来られたので、家まで送らせて頂きました」


堂々とした声で理由を話し、いつもお世話になっています…と頭を下げた。


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