幾久しく、君を想って。
「お父さんもお母さんも、君のことを案じているというだけ。それをきちんと理解して付き合って欲しいと言われてただけだよ」


具体的には教えてもくれず、そう言った後は黙り込んでしまう。
こっちは消化不良な気分がして、それ以上突っ込んでもいけないのかと悩んだ。



「……真梨さんの話は何?」


松永さんは脚を組んで質問してくる。
向けられた視線にビクリと肩を揺らし、母が言っていた大人同士の話をするんだと口元を引き締めた。


「さっきの……拓海との約束ですけど…」


胸の熱くなった出来事を思い出し、込み上げてきそうになる涙を堪える。



「ああ、男同士の約束ね」


ほやっと優しい顔をして笑い、それに胸がきゅん…と鳴る。


「あれは……本気でそう思って約束したの?」


その場だけの感情ではないと信じている。
子供との約束を裏切る様な人ではないと思っている。


「君のことを嫌いにならず、ずっと好きでいることが本気かと聞いてるのか?」


こくん…と頷きながら胸の音が煩く聞こえる。
耳鳴りのように響き渡り、静まれ…と思いながら彼を見据えた。


「…そうだよ。多分、絶対に嫌いにはならないと思う……」


さっきの様な確固たる強さは感じられない。
拓海の前だけで、虚勢を張っていたのだろうか。


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