幾久しく、君を想って。
「正直な言い方をするなら、さっきまでは絶対に大丈夫だという自信があった。
君のことを好きでい続けられる。絶対に嫌いにはならないという気負いみたいなものを持っていたんだ。
…でも、今は少し自信を無くしてる。ご両親に比べたら、俺の想いは浅いものだなと感じたから…」


「…だって、和樹さんは親じゃない…」


違いがあって当たり前ではないのか…と言おうとしたら、彼は微笑みかけてきて。


「そう、親という名の血縁者だから、愛情の深さに違いがあるのは当然なんだけど」


組んでいた脚を外して息を吐き、家族愛というものは深いよなぁ…と零した。


「君の拓海君への愛情も同じ。自分を犠牲にしてでも守る相手がいるというのは尊いよね」


それが絆となり、時には足枷にもなる。
それを知ってか知らずか、「尊い」という言葉一つで纏めた。


「僕には君との繋がりは何もない。築き上げていくのもこれからだし、それが上手く積み上がっていくかどうかも自信が持てない。
前の結婚のように真梨さんを急に信じられなくなるかもしれない。そしたら今度は君だけじゃなく、大事で尊い存在までも傷つけることになるだろうと思う。
そうならない様に努力をしていけばいいんだというのは納得しているんだけど、同時にいろんな事を考えると危惧もする……」


こっちに来て話そうと呼ばれ、彼の隣に座った。

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