幾久しく、君を想って。
言えば必ず愚痴になる。

言わなくてもいい事まで喋って、きっと後から後悔する。


落ち込んで泣くのはもう嫌。

前を向いて歩くと決めた日から、私は一人で生きていく未来を選んだ。


今更誰の気持ちを聞いたとしても、きっと自分には人を愛せる自信なんて湧かない。



愛されることしか知らなかった。

愛すということを知らないままで、結婚生活は終わってしまった。



苦い経験は一度でいい。

苦虫を噛むような思いも、一度すれば十分。




「……俺も同じなんです」


そう言った人の眼差しも揺れていた。
過去に同じ傷を見たようで、胸がぎゅっと押し潰されそうだった。



(あの松永さんに限って、同じ失敗を繰り返したいと思ってるようには見えない)


高本さんの気のせいよ…と考え事を断ち切り、ひたすら黙々と入力を進めた。


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