幾久しく、君を想って。
「その中に俺が割り込んでもいいのかなと思うと、少しは不安も生まれてくる」


自信が無くなったのはその所為なのか。
両親と話したことは、きっとこれまでの私達の生活ぶりだったのかもしれない。


「和樹さん…」


名前を呼んで彼の方へ体を向ける。

何も言わず逃げ出そうとしても良かったのに、それをしないで居てくれる。
正直に気持ちを話し、自分の弱さも見せてくれた。


「……私も…同じ様な危惧や勘繰りはすると思うんです……」


伏せがちにしていた顔を向ける彼に、フッ…と笑みを浮かべて話した。


「貴方がどんなに私のことを好きだと言ってくれても、やはり心の何処かで疑うかもしれない。
帰りが遅くなれば何処かで女性と密会しているのではないだろうか。目の前で電話に出れば、新しい恋人だろうか…と悩む筈です。

貴方の言う事を全て頭から信じられないかもしれないし、それでも傷付くのが嫌で、聞きたくても胸に押し込んでしまうかもしれない。

そうなると態度が余所余所しくなってしまうだろうし、隠し事もないのに、如何にもしている様に見えてしまうかもしれません。

……そうすれば和樹さんの見る目も変わるでしょ。望んでもいないのに、気持ちを遠ざける結果になるかもしれない……」





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