幾久しく、君を想って。
淡い朝の光が差し込むベッドの中で、静かに眠る女性を見ていた。
昨夜は彼女の実家に招かれて、両親から親バカな思いを聞かされたーーー。



「外で泣いているのが真梨だと気づいた時は青ざめました」


父親はそう言うと苦笑いを浮かべた。


「また男に騙されたのかと思って」


無愛想な態度を見せてしまい申し訳なかった…と謝り、「真梨とは付き合っているのですか?」と聞いた。



「まだ付き合っているとは言い難い関係です」


そう答えると、両親はホッとするように胸を撫で下ろした。



「お付き合いもされてない方に親バカな思いを話すようで恥ずかしいですが…」


彼女と目元がよく似た父親は、もしもそうなる前に言っておきたいことがあると話しだした。



「……ご存知だと思うが、真梨は一度結婚に失敗しております。相手は酷い男で、子供の父親になったにも関わらず、他に女を作って逃げました。

真梨はお人好し過ぎて、相手の嘘を信じて待ち続けたそうです。赤ん坊の世話を一人で見て、精神をすり減らして……」


目頭に潤ませながら、それを初めて聞いた日を振り返っているようだった。

俺もその話を聞いていたけれど、何度聞いてもムカつく男だと思う。


「私どもの所へ助けを求めてきた時は、精神的にも疲れ果てていました。すっかりやつれて、酷い状態でした。

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