幾久しく、君を想って。
彼女に声が似ている母親が柔らかい口調で語りかけてきた。
優しそうな笑みを浮かべ、少し悩むように小首を傾げた。


「貴方は拓海を我が子として愛してやれる自信がありますか?あの子は貴方とは血の繋がりも何もありません。

私達も真梨も、拓海とは血の繋がりがあればこそ、多少のことは頭にきても流せます。

…でも、それのない貴方は、拓海のことを思い続けて行けますか?

今は思春期に差し掛かっているし、これからもっと、親の言うことなんて聞かない時期がやって来ます。

小学生の間は可愛く見えるかもしれませんが、先でもその思いが変わらずにいれると思いますか?」


「付き合いだす前から大袈裟だと思われるかもしれませんが、私達にとってはあの二人は一対なのです。
どちらにも幸せになって貰いたいし、二度とあんなボロボロな状態を見たくもない」


「付き合うつもりなら幾久しくしてやって欲しいの。馬鹿な親だからそれだけが願いなんです……」


彼女の両親はそう言って頭を下げた。

痛いほど気持ちが分かり過ぎて、彼女自身に頼まれるよりも辛かったーー。


拓海君と男同士の約束を交わした時は、彼女をずっと好きでい続けられると思った。

彼女の大事な人生の財産も含めて、三人で歩き出して行こう…と思い始めていた。


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