幾久しく、君を想って。
……しかし、目の前にいる二人に比べれば、それはなんて中途半端で崩れ易い考えだっただろうか。
親の思いには到底敵いもしない。
血は水よりも濃いんだ…と、改めて思い知った。
「……どうか頭を上げて下さい」
今の俺には確約出来ることは何一つ思い浮かばない。
ただ、いい加減な思いで好きになったのではないと、それたけは伝えておきたい。
「俺は真梨さんのことも拓海君のことも大切に思っています。お二人に言われたことは、重々心に焼き付けました。
これからのことは、もう一度よく考え直してから答えを出したいと思います。
真梨さんともよく話し合って、納得のいく答えを見つけていこうと思います……」
即答出来ない時点で呆れられたかもしれない。
自分が離婚した時のことが蘇り、失敗したのも俺自身が煮え切らなかったのが原因だったのではないか…と思いだした。
別れた妻に嫌われたくなくて、彼女の我儘を黙認した。
あの時もっと、きちんと自分の意見を前に押し出してさえいたら、別れることもなかったのかもしれない……。
相手に騙され続けた彼女と同じように、失敗を繰り返したくないのは俺だって同じだ。
同じ道を辿りたくはない。
相手を傷付けて、自分も傷を負いたくは無いんだーーー。