幾久しく、君を想って。
幾久しく、君を…

誓い

真っ白な建物のドアを開けて中へ入ると、正装に身を包んだ人達の群れが見えた。

男性はタキシード、女性は着物やパーティードレス。

大人の間で子供達が燥ぎ回り、それを止める親達の声もする。



「…あっ、オバちゃん!」


紺色のスーツ姿に身を包んだ彼女の息子が私に気付いた。


「拓海君!」


ワックスで髪を固められ、いつもの様な子供っぽさは見受けられない。



「おめでとう。お母さんのドレス姿はもう見た?」


ついさっき会ってきた友人のことを問うと、「勿論!」と嬉しそうな表情を見せる。


「綺麗だったね。天使さんに見えたでしょ?」


幼い頃に花嫁を垣間見た瞬間、彼が言っていた言葉を引用した。


「天使には見えなかったけど……」


でも、普通に綺麗だったと答える彼に微笑み、もう一度「おめでとう」とお祝いを述べた。



友人の宮ちゃんが、私に彼を紹介してくれてから一年以上が過ぎていた。

なかなか一緒にならない理由を聞いたら、二人はこんなふうに話してくれた。



「覚悟が決まらなくて」


「失敗を繰り返したくないから」



なんて似た者同士だろうと呆れて笑った。

「拓海君の為にも早くくっ付いてしまいなさい!」と、発破をかけたものだ。


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