幾久しく、君を想って。
あれからゆっくり時間をかけて、今日という日がやって来た。

二度目の花嫁になった自分を見て、宮ちゃんは「怖い…」と零した。



「そんな不吉な言葉を言うもんじゃないよ。宮ちゃんは幸せになるんだから」


「そうだけど怖い。単純に幸せだけがあるとは思えない…」


彼の気持ちを信じている。
けれど、信じることが怖いと言う。


「そんなふうに思ってしまう自分も怖い。心底彼の愛に浸る瞬間が恐ろしい」


「宮ちゃん…」


幸せというものが何なのか、彼女には不明なのかもしれない。
子供が生まれて、女として一番幸せな時期に不幸を背負った。

相手が悪かっただけなのに、自分にも責任があったのではないかと思うと聞かされていた。


「宮ちゃんの不安も分かるよ。幸せの絶頂からどん底に叩き落とされるかもしれないっていう恐怖があるのも察する。

だけど、こうして良き日を迎えたんだから、いい加減今日くらいは幸せに浸ってもいいんじゃない?

彼の手も心も宮ちゃんだけのものにして、愛情で胸を膨らませてもいいでしょう?」


結婚式というのはそういう日よね?と話せば、彼女は私にぎゅっとしがみ付いてきてーーー



「林田さん!」


沢山「ありがとう」を言いだす彼女の脊中を撫でた。


「今度こそ本当の幸せを掴んでね」


永遠に幸あれ…と、願いながら束の間の時間を送ったーー。



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