幾久しく、君を想って。
「……いいですよ。それは私も観たかった映画なんです」
愛とは何かを教えてくれそうな気がした。
一度は失くした家族という存在に、もう一度だけ浸ってみたい気もしていた。
「本当ですか?じゃ一緒にお願いします!」
チケットを一枚手渡された。
カサついた指先が触れて、とくん…と胸の奥が鳴る。
「連絡先を教えておいた方がいいですね。ちょっと待って下さい」
そう言うと制服のジャンパーの胸ポケットから名刺入れを取り出して広げた。
一番上にあった紙を抜き取り、「これです」と差し出す。
それは配達用に使っているオフィスの名刺らしく、係長と役付けが記されてある。
「…あ、この役付けは気にせずに。ただのヒラですから。それよりもこの裏を見て下さい」
指先が裏返すように動くのでそうしてみた。
そこには明らかに手書きだと思われる文字が並んでいて……。
「実は金曜日に渡すつもりで用意していたんですけど、名刺入れごと部屋に置いて忘れて行ってしまって。…今日は渡せて良かったです。
次の『アラフォー部会』に参加するなら、このアドレスに連絡してきて下さい。
それと、日曜日の待ち合わせ場所とかも決めたいので、電話番号も書いてます」
ケータイ番号を指差しながら、宜しくお願いします…と囁く。