幾久しく、君を想って。
ある意味準備が良過ぎて何も言い出せない感じもするけど、それでも離婚して以来初だと思われる男性の連絡先。


微かに興奮しているようにも思えるし、その為か指先が少し震えている。




「……分かりました」


その言葉を言うだけが精一杯なんてどうして。

たった一枚の名刺なのに、どうしてこんなに胸が打ち震えているんだろう。



「それじゃ、また!」



金曜日と同じ言葉を発してトラックの運転席に飛び乗る。

エンジンを吹かした彼は、時間を散り過ぎてしまったのか、急いで発進して行った。



今度はトラックの背中を見送った。


指先に握られた小さな紙を風に吹き飛ばされないように、ぎゅっと強く摘んでいたーーー。




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