幾久しく、君を想って。
気楽に考えてかければいいんだ。

友達に連絡するように、後のことは考えず、彼に託すような気分でーー。



スーハーと深呼吸を繰り返した。

結局構えているんじゃないか…と思うと、少しだけ気持ちが解れる。


名刺に書かれた手書きの電話番号をタップした後で、勿体振るように一つ一つ確認してから発進ボタンを押した。



プププ…と発進音が流れ、コール音が聞こえだす。
細かく鳴っている胸の音は無視して、とにかく早く出て!と祈る。



「…はい、松永です」


実際よりも低めな感じの声が聞こえ戸惑う。
「宮野です…」と発するまでに、少し慌ててしまった。



「あ、あの…」


子供みたいに声がひっくり返ってしまいそう。
思いきり噛んだらどうしようかーー



「もしかして……宮野さん?」


名前を呼ばれてドキン!と鳴った胸を押さえる。
心臓の辺りで作った握り拳に、ぎゅっと力を入れる。



「は、はい。そうです」


やっぱり緊張で手も声も震える。
たかが知り合いに電話するくらいで、本当にどうかしている。


「こ、こんばんは」


必死で平静を装って挨拶した。
私の様子など知る由もない松永さんは、いつも通りな感じで返してくる。


「今晩は。今夜連絡がくるとは思っていませんでした」


わざわざ有難うございます…と言う人に、「いえ」とまでは言えたけど。


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