幾久しく、君を想って。
「俺は走るのが速くて好きだったから前の方でしたね。最初に飛ばし過ぎて、後からヘロヘロになるパターンでした」


ハツラツと仕事する姿を思い出し、そんな感じだな…と考える。
くすっと笑いが溢れそうになるのを堪え、話の続きを待った。


「日曜日なんですが、何時に待ち合わせましょうか」


思いがけず本題に入られてビクついた。
前置きのようなマラソンの話は、ワンクッション置く為にしたみたい。


「試写会は十時半からだから、三十分くらい前には落ち合ってた方がいいと思うんですが」


「そうですね。じゃあ十時に映画館の前とかでは?」


映画館は複合型の商業施設内にある。
その入り口付近で待てばいいかと思い、そう提案したんだけど。


「入り口付近は止めておましょう。人が多いと見つけられなかったら困る」


「はあ。…じゃ何処で」


見つけられない…とかいうことがあるだろうか。
顔を知らない相手でもないのに。


「一階の噴水広場ではどうですか。あそこならベンチもあるし」


「あの地面から水が噴き出ている所?」


「そうです。子供達がよく足で踏んで止めている場所です」


(あんな寒そうな所で?)


「…いいですよ、じゃあ十時にそこで」


誘ってくれたんだから文句は言わずに胸にしまい込んだ。
話は済んでしまったし、さっさと切ろうかとしたけど。


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