幾久しく、君を想って。
翌朝、拓海に日曜日はおばあちゃん家に行って欲しい…と頼んだ。

まさか男性と映画を観に行くとは言えず、前の職場の時から仲良くしている林田さんと出掛けるから…と言った。


「林田のオバちゃんとか」


オバちゃんと言われたら彼女も立つ瀬がない。
私よりも五歳年上だが、プロポーションは私よりも遥かにいいんだ。



「若い頃に買った矯正下着のおかげかな」


ケラケラと笑いながらそう話していたことがあった。
その下着を出産の度に身に着けて、体型が崩れるのを防いだのだそうだ。


「骨盤が広がらなくなるから体型が戻り易かったよ」


三人も産んでいるのにウエストのラインが括れたままだ。
四十代に入っても尚、二十代後半のような体型をしている。


「オバちゃんに会ったら何か伝える?」


実際には会わないけど、言葉だけなら電話で教えられる。



「何もない」


我が子ながら最近は本当に可愛くないことを言うようになった。
前は「また遊んでね」とか、必ず伝えるように言われていたのに。


「…そっか。林田さんガッカリしそうだなぁ」


ぽそっと呟くとチラッと目線を上げる。
それでも何かを言い出す訳でもなく、黙々と朝ご飯を食べて出かけた。


玄関のドアから拓海を送り出して部屋の中に戻り、仕事に行くまでの間に洗濯の予約をして食器を洗う。


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