幾久しく、君を想って。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」


大丈夫と言いながら車に乗り込む。
この十年近くで母はやっぱり老けたな…と思う。


もう二度と迷惑を掛けないようにしておきたい。
離婚した時のように血圧を上げたり下げたりしないようにさせないと。



発進させて職場へと向かう。
その車内で考えるのは、昨日約束を交わした人のこと。


名前は知っているけど歳は何歳なのか知らない。
『アラフォー部会』に入っているのだから、最高でも満四十四歳だろう。


果たして四十歳にもなっているのかどうか。
私と同じくらいか、少し上の様な気もする。


日曜日に会えたらその辺のことも聞けるのか。
それとも、プライベートは話さない方がいい?



あれこれと悩みつつ、視線は真っ直ぐと前に注ぐ。
余計なことまで気を回さず、落ち着いて日曜日まで待とう。


どうせ、その時だけのデートになるんだ。
精一杯大人らしくこなそう。




(デートか…)


最後にデートをしたのはいつだっただろう。
その時のあの人とは、どんなことを話しただろう。


既に仲が冷えていたんだっけ……。
笑って話をしていたっけ……。



考えるとブルーな気分になりそうで止めた。



カーステレオのボリュームを上げて流しだす。

何も考えないように歌い始める。

過去の話は、思い出したくもないーー。



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