幾久しく、君を想って。
努めて平静に日々を過ごした。

高本さんからは時々揶揄われ、松永さんとは別に親しい関係でもありませんよ、と答えると。



「ええ〜、そうなの〜?」


絶対に何かあると疑っている。
あの配達日に話をしたのは、間違っていたのかもしれない。


拓海にも内緒で会うことに気が咎めそうになる。
あっさりと男友達と映画に行くんだ…と、楽しそうにしてやればいいのだろうけど。


子供でもないから浮かれたりもできない。

大人になる、親でいる、ということは時々疲れる。


それでも堪えて日曜日を待った。
松永さんは私と違って、余裕で日々を過ごしているんだろうか。

独身に戻ってからは今回のように、誰かを誘って映画を観たり、食事にも出掛けたりしてきたんだろうか。


女性と違って男性は身持ちが軽そうでいいような気がする。
自分と結婚していた相手が、そんな感じに思えているせいかもしれない。


一言に離婚と言ってもいろいろある。
私の場合は、決していい離婚をしたとは言い難い。


ぐちゃぐちゃに糸が絡まったまま相手と別れた。
話し合うことも上手く出来ずに、本当に子供みたいだった…と今は思う。


もっと我慢しておけば良かったんだろうかと思うこともある。

私が辛抱さえしていれば、拓海は父親という存在を知りながら生活ができただろうと思う。


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