幾久しく、君を想って。
母親とは違う逞しさを知りながら成長できただろう。

そしたら今も、こんな早い段階から反抗期に入らずに済んでいたかもしれない。


それでもあの時は、とにかく早く一人になって落ち着きたかった。

平穏な日々が欲しくて、他のことが考えられない程追い詰められていた。


流石にこの最近では、我慢していても別れただろうな…と思うように変わった。


拓海には今後も父親を与えることは出来ないと思うけれど、私なりの愛情で育み、大人への階段を上がって行って欲しいと願う。



真っ直ぐであればそれでいい。

誰かを裏切ることが無ければ尚いい。

そして、いつかは愛するべき人を見つけて、私が果たせなかった幸せな結婚生活を送ってさえくれれば……。




(ああ、でもまだ十歳だった…)


成人までは、あと十年もかかる。
法律が改正されて十八歳が成人になったとしても八年間はある。

八年過ぎたら私は四十三歳。
それは若いと言えるのだろうか。


とにかくその頃までは必死で親を続けないといけない。
私だけが拓海の親なんだからーー。



過去を振り返っては意識を今に戻す。
別れてからの毎日は、掘り起こしては埋める作業の連続。


男性に対しては臆病になった。
だから、今回みたいな場合も気後れがする。


本当に私でいいのかどうか。
私でなくてもいいんじゃないのか。


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