幾久しく、君を想って。
過去の思い出は嫌になるほど
「おばあちゃんの言うことをよく聞いてね。出かける時は行く場所を伝えてからにするのよ」


朝ご飯を食べ終えた後で実家へ向かおうとする背中に声をかける。
煩そうな顔をして振り向いた拓海に、本当のことは話せてなかった。


「わかってるよ。お母さんも林田のオバちゃんと楽しんできて」


パーカーのジッパーを上げながらそう言い、さっさとドアを開けて出て行く。


「行ってらっしゃい」


声をかけるも無視をされ、やっぱり可愛くないな…と息を吐く。



「いけない!支度をしないと!」


のんびりとしてはいられない。
今日はデートとして行くんだから、それなりに女らしい格好をしておかないと。



(でも、何を着ればいい?)


服のアイテムが少ないと思い悩む。
スカートでいいんだけど、通勤にも使えそうな物しか買ってない。


明るめな色の服なんて持っていただろうか。
あるとすれば、多分かなり前の物しかない筈。


クローゼットの中を開けてハンガーに掛かっている服を探る。

この十年近くで買った服と言えば、暗めな感じの物が多い。
自分の気持ちがいつも何処か暗く、落ち込んでいた所為かもしれない。



(あっ…これは?)


見つけたパステルカラーのセーターを手にする。
レモンイエローのモヘアで編まれたセーターだ。


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