幾久しく、君を想って。
「その時はあいつにも飲ませてやるからいいんだよ。人ん家のことなんて気にしなくてもいいから、高もっちゃんも飲んで飲んで!」


もうっ…と言いながらも注がれたビールを飲み干し、どうぞ…と言って返杯している。



「仲がいいんですね、皆」


楽しそうにしている周りの人達を見ながら呟くと、目の前にいる男性が「そうですね」と笑う。


「松永さんはいつも出席してるんですか?」


美味しいよ…と勧められた焼き鳥の串を取り上げて尋ねた。


「俺は時々しか来ませんよ。一人暮らしだし、毎回飲みに出掛けられるほど高給取りでもありませんからね」


ビールで少しだけ頬の赤くなった人の顔を見つめ、(ふぅん。独身なんだ)と納得する。


「宮野さんは初めての参加でしょ?今回はどうして?」


焼き鳥美味いでしょ?と聞く人に頷き返し、参加の経緯を教えた。


「私は元旦の誕生日で満三十五歳になったんです。それを年末休暇前に高本さんに喋ったら、この会の参加権を得ることになるのね…と言われて、誘われたんです」


ちらっと隣を見てみると、既に周りの人達と盛り上がり、家庭や職場の愚痴を言い合っている。


「高もっさんは押しが強いからなぁ」


あはは…と笑う彼に同意しながら「そうなんですよ」と微笑む。


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