幾久しく、君を想って。
明日からはまた、ただの顔見知り程度の付き合いに戻る。
そんな相手の行動や言葉に、一々反応していたらいけない。

松永さんにしたらいい迷惑だ。
彼はそんなつもりで私を誘ったりはしていない。


家族や夫婦をテーマにした映画を未婚の女性と見ればどうなるかくらい、きっと彼は想像してから私を選んだ。


バツイチの私なら、冷めた目でこの映画を見るだろう。

変にのめり込まずに、大人として語り合えるだろう…と思った筈だ。


だったらその期待に応えなくては。

バツイチの女性らしく冷めた眼差しで見つめ、家族や夫婦について語らねば。



……そう思っていたのに、映画を観た後の私は、それが出来ないくらい動揺しきっていた。


過去の思い出は嫌になるくらい深く、私の心を抉り返していたーーー。


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