幾久しく、君を想って。
「でも、来て良かったと思います。案外と面白そうだし、気分転換にもなるし」


頭にもたげ掛かる日常を考えないようにして、グラスの中身を飲み干す。



「美味しい?宮野さ〜ん」


飲み込んだ側から聞かれ、咽せ込みそうになるのを堪えながら「…はい…美味しいですよ」と返せば、縋り付くような格好でいる高本さんは、既に体に力が入ってないんじゃないだろうかと思われるくらい酔っていて。


「高もっさん平気ですか?」


前にいる松永さんが心配そうに尋ねても、「へーきへーき」と笑い飛ばしているだけで。


「私が酔い潰れてもダーリンが迎えに来てくれるからいいの!」


ダーリンと呼ばれるご主人が気の毒だな…と思いつつも、そういう相手がいることが羨ましくなる。




「…ねぇ、まっちゃん〜」


まっちゃんとメンバーに呼ばれる松永さんが振り返り、「何ですか?」と聞き直す。


「今夜〜、この人のことお願いね〜」


この人と言いながら指差してるのは、どうやら私のことみたい。


「私なら大丈夫ですけど?」


帰りならタクシーに乗ってもいいし、歩いて帰ったとしても道は明るい。


「なに言ってんの〜!普段出歩かない人が大丈夫かどうか分からないでしょ〜!」


酔っ払ってる割にはまともな事を言ってくる。


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