幾久しく、君を想って。
そんな人を見ていると堪らない気分に襲われた。
今の映画を見ながら、幸せな気分に浸れたんだろうな…と思う。



「これからどうしましょうか?」


そう聞かれ、目線を上に向ける。
幾分目が充血しているようにも見える松永さんに、そうですね…と呟く。

午後一時はとっくに過ぎているのだから、本来なら食事でもしませんか?と言うべきだろうけど。


正直なところ、今はそんな気分になれない。
食べ物はおろか水でさえも、飲み込めない様な気がしている。



「……新鮮な空気が吸いたい……」


思いついたことを口にしていた。
ハッとして彼を見ると、「同感」と微笑まれた。

その微笑みに笑いを返そうとしたけど、合わせようとすればするほど唇が下がり、怒ったような表情を作り出してしまう。


楽しくも嬉しくもないのに笑い返すのは無理だ。
そんなことをしても、余計に気持ちが荒むだけだ。



諦めて俯いた。
足元の床を見つめながら映画館を後にした。


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