幾久しく、君を想って。
「だけど、タクシーもいるだろうし…」


「甘ーい!金曜日の夜なんて殆ど捕まらないわよ〜」


管を巻いてるようにしか聞こえない高本さんの言葉に戸惑う。


「はいはい、いいですよ。心配しなくても俺が責任を持って送り届けますから」


返事の仕方に迷ってるうちに松永さんがそう言って間に入ってくれた。


「頼もしいよ、まっちゃん!」


「高もっさんは勇ましいですよ」


笑いながらビールを注いでやり、そのまま私の方にも向ける。


「心配しなくてもいいので、安心して飲んで下さい」


ほやっと笑う人のいい笑顔に絆される。
ありがとう…と言いながら四杯目ともなるビールを飲み込み、少しづつ緊張もほぐれ出す。


気づけば周りの人達とも打ち解け合い、いろんな話をしていた。


「高もっさんと同じ職場?じゃあの食品宅配会社?」


「はい、私はそこの管理栄養士をしていて」


「栄養士さん?じゃあ調理とかもするの?」


「あんまりしませんね。栄養指導とか栄養管理が主な仕事なので」


事務員みたいなもんですよ…と話せば、周囲の人達は「へぇー」と納得気味な声を出す。


「宮っちは独身?」


「バカね、こんな美人が独身とかいう筈ないでしょ」


いつの間にかニックネームが付けられたらしい。
「宮っち」と呼ばれ、以前流行ったことがあるタマゴ型のゲーム機のキャラを思い返した。


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