幾久しく、君を想って。
もう一度、すみません…と深く謝り、やっと私を目で捉える。
ほやっと笑う顔が赤くて、こっちの警戒心も少しだけ緩む。


「今みたいな事はもうしませんから、手だけは繋いでもいいですか?」


「は?手?」


じっと視線が注がれるのは右手のようだ。
それに合わせるように目線を下ろし、ベンチについていた指先を折り曲げた。


それを眺め、シュン…と肩を落とす松永さん。
私が拒否をしていると思ったのか、叱られた子供のように悄気ている。




「………いいですよ」


一呼吸置いてから返事をした。
繋がれること自体は、少しも嫌だとは思わなかった。

むしろ、何処かホッとしていた。
今日だけだとしても、これから先の安心材料にはなるような気がした。



「本当ですか!」


顔を上げた人の目が大きくなる。
明らかに喜んでいる彼を見ていたら、何だか笑いが吹き出そうになった。



「はい。本当にいいです」


大人らしいデートを最後まで続けて帰ろうと切り替える。
唇と指先に触れたキスは、今まで頑張ってきた自分へのご褒美だと思えばいい。


それじゃ…と言い、松永さんは立ち上がる。
そのまま私に振り向き、「行きましょう」と手を伸ばしてきた。


「そろそろピークも過ぎる頃だし、何か食べに行きましょう」


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