幾久しく、君を想って。
晴れやかな笑みを浮かべている。
現金な人だ…と思いながら、映画に誘ってくれたから感謝しようと思い直し、自分の手を差し伸べた。



「はい」


返事をするときゅっと手を支えるように繋がれる。
同時に彼の温もりと優しさを感じて、ふわっと心の中が明るくなった。



「行こう」


歩き出す人の歩調に従い、少し後ろを付いて歩く。



こんなふうに彼と…


別れた夫と歩きたかったな…と、不謹慎にも思ってしまったーー。




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