幾久しく、君を想って。
「トラックを運転している最中に、渋滞とかに引っかかると眠くて堪らないんですよ」


おかげでブラックコーヒーの缶が手放せなくなった…と呟き、「カフェインは重要ですよね」と問いかける。


「本当にそう思います!」


力強く賛同して笑う。
松永さんと笑い合っていると、気持ちがほっこりと癒されてくる。



「松永さんって何歳なんですか?」


ずっと気になっていたことを聞いてみた。
多分、年上だとは思うけど、あまり変わらない気もする。



「俺?三十八です」


「三十八」


そうか…と納得する。
別れた夫よりも三歳年下なんだ。


ふぅん…と思い、ハッと我に返る。
ついあの人と比べてしまっている。


「何か?」


目の前にいる人が首を傾げる。

頭に浮かんでいた人とは違うから、思わず狼狽えそうになった。


「あ、いいえ、何も」


バツが悪いから視線を逸らす。
あまり変わらないですね…と誤魔化しながら冷や汗をかく。


どうして比べてしまったんだろうか。
松永さんは、別れた夫とは全然違う雰囲気なのに。


雑念を追い払う様な気持ちでコーヒーを飲み込んだ。
ごくんと通り越しながらも、変に引っ掛かりそうな気がする。



「…あの」


向かい側にいる人が躊躇いがちに声をかけてきたから見上げる。
二度と比べないようにするんだ…と誓い、真っ直ぐと彼を見据えた。


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