幾久しく、君を想って。

「…はい?」


声を返すと何だか困った様な笑みを浮かべる。
言い出しにくいことでもあるのかな…と首を傾けると。



「……さっきの今で、言い出し難いんですけど…」


目線を下げ気味にした人がテーブルの下に両手を下げた。
そのまま口を噤み、何だか知らないけど言い淀む。


さっきの…という言葉で私の方は一瞬ドキッとした。
顔が熱くなってきそうなのを堪え、指先に落とされた唇の感触を思い返していた。


ぎゅっとカップを持つ手が震えきそう。
松永さんが何を言い出すのだろうか…と、ドキドキしながら待った。



彼の唇が開かれ、声がした。


「……良ければまた……会ってくれませんか」


申し訳なさそうな顔をして呟き、きゅっと唇を閉める。

しまったな…というような顔つきにも見え、嫌なら言わなくてもいいのにな…と思う。

 
そんな顔をしてまで言うべきことなのか。
こっちは最初から今回だけだと思っているけど。



「松永さん…?」


まさか本気で思っている訳ではないですよね…と問い掛けそうになった。
渋い顔をしたままで、彼は続きを喋った。


「あんな事をしておいて恥ずかしいんですけど、また是非会って欲しいんです」


お願いします…と頭を下げてくる。
こっちは彼の意図が分からなくて、ぼうっと頭のつむじを見てしまった。


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