幾久しく、君を想って。
答えを迷っていると松永さんがテーブルの上に手を上げた。
もう少し前のめりになり、下から覗き込むような目線をくれる。


「宮野さんが、子供さんとの約束がない日だけでいいですから。また一緒に会って話しましょう!」


押しの強い言い方をする。

彼のような男性に誘われて、確かに嫌とは言い難い。


会って話せたら楽しいだろうと思う。
離婚して以来、誘われることは皆無だったから。



「あの…」と呟きながら目線を下げて迷う。
松永さんの方は、固唾も飲まずに見守っている。

覗き込まれているんだ…と思うと緊張する。
さっきの事が頭に浮かんできて、思考が乱れて仕方ない。


無意識のうちに、こくん…と首が動いたのは偶然なのかどうか。
だけど、それを見た松永さんの目が大きく開いた。



「本当ですか!良かった!」


大袈裟に喜び、安心した様に大きく息を吐く。
こっちは意識して頷いた訳ではないと、今更ながら言える筈もない。



「じゃあ宮野さんの連絡先を教えて下さい。番号はこの間登録したので、メルアドも頂けると助かります」


行動が早いと言うべきなのか。
またテンパっているのだろうか。


スマホを取り出して彼のアドレスにメールを送信した。
私のアドレスには、『mari & takumi』の文字が入っている。



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