幾久しく、君を想って。
「おやすみなさい」


拓海を連れて隣のアパートの部屋へ帰った。


明日の準備を済ませ、何気なく見るのも忘れていたスマホの電源を入れてみれば。



「あっ…」


メールが届いている。
誰だろうか…と思い、アプリをタップをした。



『今日はありがとうございました。』


昼間会った人からのメールは、そんなお礼から始まっていた。
それから冷や汗をかいている顔の絵文字が付けられていて。


『今日は大変失礼をしました。離婚して以来、初めてのデートでいろいろと思う所もあって複雑でした。
過去に引き摺られている宮野さんを虐めてみたいような気もしてしまい、本当に申し訳なく思っています。
これに懲りずにまた会ってくれると嬉しいです。次からは、決して手を出さないよう、自分によく言い聞かせておきますから』


泣き顔も付けられていて、クスッと小さく笑う。


離婚以来、初めてのデートというのはあまり信用していないけれど、私を虐めてみたくなったという気持ちは、何処となくだけど理解できるような気がした。


私も彼を怒鳴った時、きっと同じ心境だった。

どんな理由で離婚届を用意したにせよ、それを分かると言った彼を許せないと思った。


相手のことを思った上での行動だとしても、夫婦は離れてしまえばお終いになる。

だから、離れずにいることを努力して欲しいと願った。


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