幾久しく、君を想って。
今晩の食事は、拓海の好きなカレードリアにしようと思いながらカレーを作り始める。
お昼は筑前煮と酢の物、かきたま汁という献立だったから、和風の後の洋風でいい。

なるべく給食と被らないように、献立表は常に冷蔵庫の側面に貼っている。

仕事柄、この献立表があると案外と役に立つ。
宅配用の献立を考える時には参考にもできるし、家での食事を作るのにも便利だ。



(そう言えば松永さんって、食事はどうしているんだろう)


グツグツ…と煮込む鍋の前で、昨日の人のことを思い出した。
一人暮らしをしていると言っていた彼は、毎日何を食べているんだろうか。


まさかとは思うけど、コンビニやスーパーの弁当や惣菜だけで済ませているのではないか。

晩酌のお酒だけ飲んでごろ寝して、気づけば朝が来るような生活をしているのではないか。

男の独り暮らしというのがどんなものかは知らないけど、あまり良いようには浮かんでこない。


どうでもいい想像を繰り返しながら、同時にいろいろと不安になり始める。

こんな馬鹿げた不安を解消する為に、彼にメールを送れば笑われそうだ。



(駄目駄目。こんなことで連絡をしたら勘違いされる)


自分に言い聞かせながら、向こうから連絡があればいいな…と思い始める。
バツイチでコブ付きの私に、どうして彼が連絡なんてしてくるんだ。


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