幾久しく、君を想って。
自分の分を少しお皿に入れてやった。
拓海は嬉しそうにスプーンを取り上げ、それを口の中に頬張る。



二人だけの食卓にはもう慣れた。
これからも二人だと思うと、少し切ない気もするけど。



「ごちそうさま!」


美味しかった…と素直に感想を言われて嬉しくなる。

我が子はやっぱり可愛いな…と、調子よく思ってしまった。



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翌日の火曜日は生協の配達日。

昨夜は寝る前に思い出し、慌てて注文のカタログを開いた。

拓海の好きな物を幾つか頼み、切れ掛かっている調味料をチョイスする。

それから別チラシに目を向け、『バレンタイン特集』の文字を見てドキン!と心臓が跳ね上がった。


先週、松永さんから「良かったら注文して下さい」と言われたのを思い出し、するべきだろうか…と思い悩む。

チラシには美味しいと評判なスイーツ店の協賛商品も載っている。

それは前に林田さんが「美味しいのよ」と言ってくれたチョコと同じ種類のもので、確かに美味しかったから、「じゃあこれを拓海に買おうかな」と決める。


毎年母の手作りチョコレートでは飽きているかもしれないし、たまには贅沢もいいかなと考えた。


「でも、今年限りだけど」


ポツリと呟き、注文書にコードと発注数を記入してから後はどうしようかと迷う。


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