幾久しく、君を想って。
調理員さん達には友チョコを毎年配るけれど、人数も多いから手作りの方が安上がりだし。

それなら…と、チラシの裏にあった手作り用のチョコレートとタルト生地を注文し、飾り付け用のアーモンドとスプレーチョコをプラスする。


頭の中で出来上がったチョコタルトをイメージして、美味しそうだな…と思っていた時。



(そうだ、松永さんにはどうする?)


試写会のお礼をまだしていなかった…と思い出す。
コーラもお昼もコーヒー代も、全部彼が奢ってくれたんだ。


お返しをしないといけないよね…と思いつつ、久保さんとのやり取りが思い浮かんだ。

あの時に彼は、お酒の入ったチョコレートはあまり好きではないと言っていた。

ビターとかブラックならいい…と言っていたけれど、果たしてあれが本心なのかどうか。

端から見れば単純に、久保さんに話を合わせていただけのようにも受け取れた。


困ったな…と思い、ふと目線を走らせると、チラシの表に載っているのはチョコブラウニーの写真。


これもいいな…と眺め、(そうだ!これだ!)と思いつく。

先に注文していたタルト生地やスプレーチョコを注文するのは止めて、手作り用のチョコレートを追加する。

他の材料はスーパーで購入しよう。
生協で全部注文してしまうと、何を作るのかが皆にバレてしまう。
それでは面白くないし、楽しみも減る。



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