幾久しく、君を想って。
夜になり、スマホを前に考え込む。

松永さんは私みたいなコブ付きにメールをしないで、久保さんのような独身女性に送ればいいのではないのか。

私みたいなのとメールの交換をしても楽しくないだろうし、一体何のメールをしてくるつもりでいるのだろう。

妙に落ち着かない気がしてお風呂にも入れず、じっと睨んだまま待っていた。



「お母さん、お休み」


拓海は家に帰って直ぐに宿題を済ませたらしく、約束の時間までゲームを楽しんだ後は、きちんと私の手元にゲーム機を置いて声をかける。


「お休み。きちんと布団掛けてね」


まだ扱いやすい年頃だな…と実感する。
これが小学校を卒業したら、手も付けられないような暴れ者になったりもするのだろうか。


眠そうに欠伸を噛みながら頷き、部屋へと向かう拓海。
その小さな背中を包み込んで、あっためてやれたのは低学年までだった。

今頃そんなことをしたらきっと、「ぎゃー!」と叫ばれて拒否されそうだ。

私にとっては幾つになっても小さな拓海のままなのに、本人はきちんと大人への階段を上っていこうとしている。


このまま真っ直ぐに育ってくれれば何よりも有難い。

いずれは独り立ちして、自分の給料で生活をしていけるようになれればいい。



そう言えばいつだったか、林田さんが言っていた。

「子供が自立するというのは、自分の家庭を持った時らしいよ」と。


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