幾久しく、君を想って。
親の元を離れ、家族を作って独立する。
それを本当の意味での「自立」だと言うんだそうだ。


彼女には息子が三人もいて、それぞれが社会人だったり学生だったりしている。

一番末っ子の三男坊が無事に高校を卒業してさえくれれば、子育ての半分は終わったことになるのかもなぁ…と零していた。


拓海が自立する歳は幾つだろうか。
その頃の私は、何歳になっているんだろう。


両親は元気でいてくれるだろうか。
病気をして寝たきりになったり、どちらかが亡くなり、独居で生活をしていなければいいが。


良からぬ事ばかりが頭の中を掠める。
やっぱりじっとしているのが良くないと思い、待っていないでさっさとお風呂にでも入ってこようと決めた。


リビングの椅子から立ち上がり、電気ストーブの電源を消そうとした時。

ブブブ…とスマホが震えてライトが灯った。
メールの受信を告げるアプリが表示され、ドキッと液晶画面を見守る。


松永さんだろうか。
それとも、それ以外の人かメルマガか。


とにかく確認した方がいい。
彼でなければ、お風呂にさっと入って上がろう。


ロックを解除してメールのアプリを起動する。
受信メールを選び、一覧表示を目にして胸が鳴った。


『松永さん』という苗字だけの名前。
それを見ただけなのに、どうしてこんなに胸が躍ったりするんだろう。


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