幾久しく、君を想って。
『こんばんは。寒いですね』


そんなタイトルが付けられたメールを読みだしながら、ふと別れた夫のことを思い出した。

あの人と最後にメールを交わしたのは、離婚届を出しました…という報告だった。



『了解です。ありがとう』


短い返信を受け取った後、二度と交わさないだろうと思い、メルアドも履歴も電話番号も全て削除した。


幾久しくもなれなかったな…と思いながら、乾いた涙に暮れたんだった。



目線を文章に戻しながら、この人とはどうなるだろうか…と思う。

名前と歳が分かり、別れたくもないけど離婚したふうな感じであると窺えた人。

誰にでも優しそうにしている彼と、これからどんな付き合いをしていけばいいのか。



『宮野さんのことを教えて下さい』


質問の内容を見つめながら、私も彼をもっと知りたいと思う。


でも、自分は只の独身ではない。
バツもコブも付いていて、もっと先では親だって見なければならない立場だ。


それなのに、どうして私?
他に思いを寄せてくる女性も居るだろうに。


迷いながら一つ一つの質問に対する答えを打ち込み、最後に昨日思った質問を返した。


『松永さんは、いつもどんなふうに食事をしていますか?』


離婚後、作ってくれる人は居なかったのか。
お米は研げるのか。
料理は上手いのか下手なのか。


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