切手に想いを添えて
切手が好きじゃないのに集め始めたってどういうことなんだろう?
「久枝さんが切手を集める切っ掛けを作ったのは私なの。」
「……?」
「ある日ね、いつものように学校の帰りに二人でここに来た時……
久枝さんはいつもなら外で待っていてくれるのだけど、何故かその日は一緒に中に入ったの。
そしたら久枝さん、帰り道でなんだか様子が可笑しくてね。
始めは中々話してくれなかったのだけれど、問い詰めたら
、笑わないで聞いてくるなら話しますって言うの。
久枝さんがそんな風に言うなんて、何かしら?と思ったら…
局員さんに一目惚れしたんですって。」
「一目惚れですか!?」
あのお祖母ちゃんが!?
「そうなの!」
おばあさんはまるで女学生に戻ったかのように、うきうきと話を続けた。
「あの堅実な久枝さんが一目惚れなんて言うから私驚いちゃったわ。
だって、久枝さんあの頃凄くおもてになって、学校前で手紙を渡されたことだってあったし、家にお見合いの話を持ってきたことなんて幾度もあったのに、それを男性には興味がないし今は学業に専念したいからって全て断っていたの。
それなのにあんな事を言うんですもの。
とても信じられなかったわ。」
おばあさんから語られる話は、私の大好きなお祖母ちゃんの話のはずなのに、全く知らない人の話を聞いているような…そんな感覚がした。
たけど、わくわくしてもっと聞いていたくなる…それはまるでお伽噺話に似ている。そんな感覚。
にしても、お祖母ちゃんそんなにモテたんだ~
とても可愛いらしい女の子だったとは聞いたことがあったけど、ここまでとは…
残念ながら、その遺伝子は母親のところで止まってしまったらしい…
これまでの人生で一度たりともその恩柄に預かったことがないのだから。
「お祖母ちゃんにそんなことが…
もしかして初恋だったんでしょうか?」
「ええ、それが彼女の初恋。
人を好きになる。とても素敵なことじゃない?
でも、久枝さん、今度は困ったわって深刻な顔して言うから何かしらと思ったら…
どうやって会いにいけばいいかしら?って。
用事もないのにただ行くのは変だし、でも一目見たい、出来ることなら言葉を交わしたい。
久枝さんて昔からとても可愛らしい方なのよね。」
確かに可愛い…
乙女だ…
「だから、私言ったのよ。
なら、私と一緒に切手を集めましょう?って。
そしたら行く口実が出来るじゃない。」
「それで、祖母は切手を集め始めたんですね。」
「秋山さーん、お待たせしましたー」
祖母が切手を集め始めた理由を聞き終わったタイミングでイケメンさんに呼ばれ、おばあさんは席を立った。
お祖母ちゃんの若い頃にそんな事があったんだ~
…って、あれ?お祖母ちゃんって、お見合い結婚だったよね?
それにおじいちゃんは小説家だし…
その初恋は実らなかったってことなんだよね?
支払いを終え戻ってきたおばあさんに、話の続きを聞こうと口を開き掛けたが…
「千鶴様!こちらにいらしたんですか!?
お出掛けになる際はお声掛け下さいといつもあれ程お願いしておりますのに!」
息荒く入ってきたのは黒いスーツに身を包んだ、30代後半くらいの男性だった。
短く整えられた黒髪に、磨きあげられた黒い革靴。
"怪しい"が服を着て現れたような人だった。
誰!?
この執事みたいな人は!?
「久枝さんが切手を集める切っ掛けを作ったのは私なの。」
「……?」
「ある日ね、いつものように学校の帰りに二人でここに来た時……
久枝さんはいつもなら外で待っていてくれるのだけど、何故かその日は一緒に中に入ったの。
そしたら久枝さん、帰り道でなんだか様子が可笑しくてね。
始めは中々話してくれなかったのだけれど、問い詰めたら
、笑わないで聞いてくるなら話しますって言うの。
久枝さんがそんな風に言うなんて、何かしら?と思ったら…
局員さんに一目惚れしたんですって。」
「一目惚れですか!?」
あのお祖母ちゃんが!?
「そうなの!」
おばあさんはまるで女学生に戻ったかのように、うきうきと話を続けた。
「あの堅実な久枝さんが一目惚れなんて言うから私驚いちゃったわ。
だって、久枝さんあの頃凄くおもてになって、学校前で手紙を渡されたことだってあったし、家にお見合いの話を持ってきたことなんて幾度もあったのに、それを男性には興味がないし今は学業に専念したいからって全て断っていたの。
それなのにあんな事を言うんですもの。
とても信じられなかったわ。」
おばあさんから語られる話は、私の大好きなお祖母ちゃんの話のはずなのに、全く知らない人の話を聞いているような…そんな感覚がした。
たけど、わくわくしてもっと聞いていたくなる…それはまるでお伽噺話に似ている。そんな感覚。
にしても、お祖母ちゃんそんなにモテたんだ~
とても可愛いらしい女の子だったとは聞いたことがあったけど、ここまでとは…
残念ながら、その遺伝子は母親のところで止まってしまったらしい…
これまでの人生で一度たりともその恩柄に預かったことがないのだから。
「お祖母ちゃんにそんなことが…
もしかして初恋だったんでしょうか?」
「ええ、それが彼女の初恋。
人を好きになる。とても素敵なことじゃない?
でも、久枝さん、今度は困ったわって深刻な顔して言うから何かしらと思ったら…
どうやって会いにいけばいいかしら?って。
用事もないのにただ行くのは変だし、でも一目見たい、出来ることなら言葉を交わしたい。
久枝さんて昔からとても可愛らしい方なのよね。」
確かに可愛い…
乙女だ…
「だから、私言ったのよ。
なら、私と一緒に切手を集めましょう?って。
そしたら行く口実が出来るじゃない。」
「それで、祖母は切手を集め始めたんですね。」
「秋山さーん、お待たせしましたー」
祖母が切手を集め始めた理由を聞き終わったタイミングでイケメンさんに呼ばれ、おばあさんは席を立った。
お祖母ちゃんの若い頃にそんな事があったんだ~
…って、あれ?お祖母ちゃんって、お見合い結婚だったよね?
それにおじいちゃんは小説家だし…
その初恋は実らなかったってことなんだよね?
支払いを終え戻ってきたおばあさんに、話の続きを聞こうと口を開き掛けたが…
「千鶴様!こちらにいらしたんですか!?
お出掛けになる際はお声掛け下さいといつもあれ程お願いしておりますのに!」
息荒く入ってきたのは黒いスーツに身を包んだ、30代後半くらいの男性だった。
短く整えられた黒髪に、磨きあげられた黒い革靴。
"怪しい"が服を着て現れたような人だった。
誰!?
この執事みたいな人は!?