切手に想いを添えて
傘を返しに行く時、何かお礼に持って行こうと帰り路で色々考えていたが、結局何がいいか決まらず家まで着いてしまった。
「あら、その傘どうしたの?」
玄関のドアを開けると丁度お母さんが階段から降りてくるところだった。
その手には、お祖母ちゃん家で見た古びた蓬屋の箱を抱えていた。
そうだ!蓬屋の大福にしよう!
あれ美味しくて有名だしね!
「郵便局の人が貸してくれた~」
「ほら~お母さんの言うこと聞かないから~」
「それはそうだけど…」
呆れているお母さんに、
『持っていかなくて本当良かったんだから!』
とは、言えず…
言ったら、理由を聞かれるのは目に見えてるし…
だか、このままお母さんの小言を聞き続けるのは避けたい。
最近ではこういうことから小言が始まり、気付けば就職の話にまで繋がっていく…
そうならないために、次の小言を防ぐのは必須だ。
私の心の平安のためにも!
私は目についた箱に話題をすり替えることにした。
「その箱、お祖母ちゃん家にあったやつだよね?
どうするの?」
「あぁ、これね。お母さんもらうことにしたの。
あなた達がこれだけ置いてったから~」
「それ、ただの箱じゃなかったの!?」
「これ、おばあちゃんの想い出の箱なのよ。
結婚が決まった時に蓬屋さんがお祝いでお菓子くれたんだって。
これ、ずっと捨てられなかったみたいでね~
お祖母ちゃん、大事な物は全部これに入れてたのよ~
だから何だが捨てられなくて。
それよりも、里子おばちゃん入院するって言うから明日お見舞い行ってくるから。
留守番よろしくね。」
「は~い。」
留守番か~
今のニートの私に留守番よろしくねと言うのは、掃除、洗濯、ご飯の用意よろしくね、という意味だ。
明日傘返しに行こうと思ったけど、きっと無理だな~
「里子おばちゃん、どこか悪いの?」
「老衰よ。もう随分な年だもの。」
里子おばちゃんはお祖母ちゃんの従姉で御年85歳。
昨年骨折で入院するまでは元気過ぎるご老人だったのだけれど、それからはみるみる体が弱っているそうだ。
「人間、いつどうなるか分からないわね~
お母さんだっていつまで元気か分からないんだからね。」
「縁起でもない!そういうこと言うの止めてよねー」
「そう思うなら早く就職して安心させて頂戴。
お母さん、いつ心労で倒れるか分からないわよ。」
「はい…」
それを言われちゃ、何も言えないじゃん…
私はそそくさと自分の部屋に逃げ込んだ。
「分かってますよ~
いつまでもこうしてちゃだめだってことわさ~」
私はお母さんの言葉に押し倒されるかのようにベッドに倒れ込んだ。
確かに、人間いつどうなるか分からないし…
そのためにそろそろお金貯めないとな…
貯金も際限なくあるわじゃないんだし…
「いつまで元気か分からないか~
確かにことわざでもあるよね。
いつまでもあると思うな親と金って………」
いつまでも…
と、そこで私は大事なことに思いあたった…
お祖母ちゃんの初恋の人…
お祖母ちゃんが女学生の時、もう働いてたってことはいくつだ?
5歳くらい離れてたのか、はたまた10歳くらい離れてたのか…
場合によってはその人がどこにいるか分かっても、もう生きてないことだってあるよね?
こんな悠長に構えてる時間なんてないんじゃない?
もしかしたら、里子おばちゃんみたいに明日どうなってるか分からないなんて事態かもしれないじゃん!
会長さんと偶然に会おうなんてのんびり構えた私のバカ!
私はベッドから飛び起き、机の一番上の引き出しを開けて大事に閉まっていた名刺を取り出した。
そして、一つ深呼吸してから勇気を振り絞った。
「あら、その傘どうしたの?」
玄関のドアを開けると丁度お母さんが階段から降りてくるところだった。
その手には、お祖母ちゃん家で見た古びた蓬屋の箱を抱えていた。
そうだ!蓬屋の大福にしよう!
あれ美味しくて有名だしね!
「郵便局の人が貸してくれた~」
「ほら~お母さんの言うこと聞かないから~」
「それはそうだけど…」
呆れているお母さんに、
『持っていかなくて本当良かったんだから!』
とは、言えず…
言ったら、理由を聞かれるのは目に見えてるし…
だか、このままお母さんの小言を聞き続けるのは避けたい。
最近ではこういうことから小言が始まり、気付けば就職の話にまで繋がっていく…
そうならないために、次の小言を防ぐのは必須だ。
私の心の平安のためにも!
私は目についた箱に話題をすり替えることにした。
「その箱、お祖母ちゃん家にあったやつだよね?
どうするの?」
「あぁ、これね。お母さんもらうことにしたの。
あなた達がこれだけ置いてったから~」
「それ、ただの箱じゃなかったの!?」
「これ、おばあちゃんの想い出の箱なのよ。
結婚が決まった時に蓬屋さんがお祝いでお菓子くれたんだって。
これ、ずっと捨てられなかったみたいでね~
お祖母ちゃん、大事な物は全部これに入れてたのよ~
だから何だが捨てられなくて。
それよりも、里子おばちゃん入院するって言うから明日お見舞い行ってくるから。
留守番よろしくね。」
「は~い。」
留守番か~
今のニートの私に留守番よろしくねと言うのは、掃除、洗濯、ご飯の用意よろしくね、という意味だ。
明日傘返しに行こうと思ったけど、きっと無理だな~
「里子おばちゃん、どこか悪いの?」
「老衰よ。もう随分な年だもの。」
里子おばちゃんはお祖母ちゃんの従姉で御年85歳。
昨年骨折で入院するまでは元気過ぎるご老人だったのだけれど、それからはみるみる体が弱っているそうだ。
「人間、いつどうなるか分からないわね~
お母さんだっていつまで元気か分からないんだからね。」
「縁起でもない!そういうこと言うの止めてよねー」
「そう思うなら早く就職して安心させて頂戴。
お母さん、いつ心労で倒れるか分からないわよ。」
「はい…」
それを言われちゃ、何も言えないじゃん…
私はそそくさと自分の部屋に逃げ込んだ。
「分かってますよ~
いつまでもこうしてちゃだめだってことわさ~」
私はお母さんの言葉に押し倒されるかのようにベッドに倒れ込んだ。
確かに、人間いつどうなるか分からないし…
そのためにそろそろお金貯めないとな…
貯金も際限なくあるわじゃないんだし…
「いつまで元気か分からないか~
確かにことわざでもあるよね。
いつまでもあると思うな親と金って………」
いつまでも…
と、そこで私は大事なことに思いあたった…
お祖母ちゃんの初恋の人…
お祖母ちゃんが女学生の時、もう働いてたってことはいくつだ?
5歳くらい離れてたのか、はたまた10歳くらい離れてたのか…
場合によってはその人がどこにいるか分かっても、もう生きてないことだってあるよね?
こんな悠長に構えてる時間なんてないんじゃない?
もしかしたら、里子おばちゃんみたいに明日どうなってるか分からないなんて事態かもしれないじゃん!
会長さんと偶然に会おうなんてのんびり構えた私のバカ!
私はベッドから飛び起き、机の一番上の引き出しを開けて大事に閉まっていた名刺を取り出した。
そして、一つ深呼吸してから勇気を振り絞った。