切手に想いを添えて
特段これと言ってやりたい事はない。




就職氷河期真っ只中でなんとか就けたイベント会社の仕事も、それがやりたかったというよりも、それしか内定をもらえなかったからに過ぎない。

それも、不況の煽りで勤めて半年で会社は倒産。
今に至る。





考え込む私をそれが答えととらえたらしく、葉子姉ちゃんが口を開いた。


「やっぱりさ、前島家はお堅い仕事じゃないとダメなんじゃない?
代々そうだったみたいに例外なんて認められないのよ。
きっとご先祖様の力が働いたに違いないわね。」




悔しいが、意地悪く笑う葉子姉ちゃんに、またもや反論出来ない…




お父さんは警察官、お母さんは元銀行員、言子姉ちゃんは市役所勤め、葉子姉ちゃんは高校の先生。

叔母さん、叔父さんだってそんな感じで家系図を遡っていってもそんな感じだ。




そう言えば、お祖母ちゃんも習字の先生やってたって言ってたな~

そうか…
私が今ニートなのはご先祖様のせいなのか…






でも、何にでも例外はあるわけで…






「でもさ!お祖父ちゃんは小説家だったじゃん。」



お祖父ちゃんは結構有名な小説家で、時代劇物とかユーモア溢れる社会風刺的な物まで色々書いていた。



「確かにお堅い話も書いてたけど、なんか前島家のお堅さとはちょっと違わない?
何て言うか、社会一般的にお堅い人をイメージする職業トップ10には入ってはないでしょ。
だったら私もお祖父ちゃんみたいに例外的な仕事に就けると思うんだよね。」




と胸を張れば、二人の深いため息が落とされた。




「ミッコ、取り敢えずやりたい事がないなら何でも良いから働きなさいよ。
働かざる者食うべからずって言うでしょ。」



「何でもって…」



確かに、生きてくには働かなくちゃだけどさ…




「葉子姉ちゃん、生徒にもそんな事言ってるの?
何でも良いから受験しろとか。」



はぁ~と、葉子姉ちゃんは深い溜め息を吐いた。



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