《短編》遠距離なぼくたちの甘い新年の迎えかた《改訂版》
待ち合わせ。
よく待ち合わせてたいつもの公園で俺は少しドキドキしていた。そこは幼なじみの俺達が小さい頃からよく遊んでいた、どこにでもあるような公園。麻里に会うのは夏以来だ。
真冬の切るような夜風が、まだ小さく固い蕾をたくさん付けた細い枝を揺らしている。
いつもバスターミナルまで迎えに行くって言うのに、麻里はここで待っててと言って聞かない。しかも今回彼女の到着は夜なのに。
高校を出てお互い地元を離れ遠距離になってしまった俺達が会うときのなんとなくの流れが、いつの間にか恒例行事と化してきた。麻里はそれをまっとうしたいだけ。
いつもとは違う穏やかな時間の流れを心地よく感じながら、コートのポケットで俺は自分の手が冷えないよう温めていた。
「ゆーうーとぉー!」
合図のように公園の入り口あたりで何かが宙を舞った。暗闇に響くよく通るでかい声。大晦日に免じてご近所さんお許しください。いや、そんなふうに呑気にしてたらくるぞ、構えろ!
俺はグッと体躯の芯に力を込めた。
「会いたかったー!」
「俺も……っブフォッ!?」
麻里の猪並みのダッシュ力に完敗した瞬間だった。受け止めきれずに背中から思い切り地面に叩きつけられた。
「痛ってー、大丈夫?」
慌てて彼女の無事を伺った。上体を起こすと麻里は隙間もないくらい俺の胸にピッタリしがみついていた。子猿か! とか言わない。笑っちゃうくらい可愛いから。
真冬の切るような夜風が、まだ小さく固い蕾をたくさん付けた細い枝を揺らしている。
いつもバスターミナルまで迎えに行くって言うのに、麻里はここで待っててと言って聞かない。しかも今回彼女の到着は夜なのに。
高校を出てお互い地元を離れ遠距離になってしまった俺達が会うときのなんとなくの流れが、いつの間にか恒例行事と化してきた。麻里はそれをまっとうしたいだけ。
いつもとは違う穏やかな時間の流れを心地よく感じながら、コートのポケットで俺は自分の手が冷えないよう温めていた。
「ゆーうーとぉー!」
合図のように公園の入り口あたりで何かが宙を舞った。暗闇に響くよく通るでかい声。大晦日に免じてご近所さんお許しください。いや、そんなふうに呑気にしてたらくるぞ、構えろ!
俺はグッと体躯の芯に力を込めた。
「会いたかったー!」
「俺も……っブフォッ!?」
麻里の猪並みのダッシュ力に完敗した瞬間だった。受け止めきれずに背中から思い切り地面に叩きつけられた。
「痛ってー、大丈夫?」
慌てて彼女の無事を伺った。上体を起こすと麻里は隙間もないくらい俺の胸にピッタリしがみついていた。子猿か! とか言わない。笑っちゃうくらい可愛いから。
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