3センチHERO

「紘、紘なの…?」


「ああ、そうだよ」


三枝くんの笑顔にほっとしたのか、女性は涙をぼろぼろと流し始めた。


「嘘でしょう!? …なんで、こんな姿に……っ!」


とめどなく溢れる涙は、丸いテーブルにどんどん雫を垂らしてゆく。


そりゃあ、泣きたくもなるわけだ。


自分の息子が急に行方不明になって、数日後本人から電話で無事の報告があったと思ったら、親指ほどの大きさになっているんだから。


たまげたなんてものじゃないはず。


「じゃあ、ゆっくり説明するからちゃんと聞いてくれる?」


三枝くんが、胸ポケットから降りてお母さんの真っ正面に座った。


「…もちろん、話してちょうだい。お説教はその後よ」

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