3センチHERO
その後は、私が見つけるまで、教室で何とか1週間やり過ごしていたらしい。
食料さえなかったものの、夜になってしまえば静かだし広い部屋を使い放題できるため、ある意味楽しかったのだ、と笑顔。
かと言って、私に気づいてもらえなかった場合のことを考えると、おそらく餓死していたに違いない、と1人妄想しては悲鳴をあげた。
それからは私との出来事。
出会って、一緒に住み始めて、ロールケーキ食べたり、ドールハウスを掃除したり。
おばあちゃんちに行って、彼が『一寸成就』をしているのだと知った。
はじめは『一寸成就』がなんだか全然分からなかったし、この地域にそんな伝説があることも知らなかった。
『不安なことも心配なことも、数え切れないほどたくさんあったけれど、俺と鳴海、そして小春と一緒なら頑張れる気がしたんだ』
真剣な表情で母親に語ってくれる三枝くんの背中に、私たちははにかんで笑う。
出会えて良かった、と思っているのは私だけじゃないのかもしれない。