3センチHERO
「…というわけ。信じてくれた?」
曇りのない澄んだ目で、三枝くんは自分の母親に尋ねる。
複雑、といった表情をしているのは、きっと『一寸成就』について何も知らなかったからだろう。
だがすぐに、はあ、と呆れたような声を出し、彼の質問に答えようとする。
「そうね、信じるしかないでしょう? まあ確かに意味不明でちんぷんかんぷんなところはあるけれど、とてもじゃないけど作り話だとは思えないもの。現に紘は小さくなっているわけだし、紘が国語の授業が得意ではないのは、昔からよく知っていることだわ」
「なにそれ。褒めてんの? それとも、けなしてんの?」
「褒めてるのよ。馬鹿な頭で、よくそこまでこの訳の分からない状況を理解できたことね」
「…馬鹿な頭に育てたのは、母さんだろ」
ぼそっと呟いた三枝くんの言葉は、母親の怒りに火を付けた。