3センチHERO

「だが、紘なら今は……」


さっきも聞いて同じセリフに、やっぱり家族なんだな、とつい微笑ましくなる。


けれど三枝くんはそれが嫌だったのか、母親時よりも早く姿を現して見せた。


「……っ!? お、お前…」


「こんにちは、三枝さん」


他人行儀なその態度には、ある意味で彼の素直な心が表れているよう。


「お前っ……! 友人も来ているんだろう!? いつまでも名前呼びして、恥ずかしくないのか!」


「彼らは俺の思いを全て知っています。だから、今さら隠したりするような真似はしません。もう自分に嘘はつかないと決めたから」


まっすぐにただ父親の目を見つめている。


小さいながらも、彼のその背中は計り知れないほど立派に見えた。

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