3センチHERO

「紘…。もしかして、そのことを言いに来たの?」


3センチになってしまったことが『一寸成就』の影響だとは先ほど耳にしたが、それがどうも自分のせいに思えてしまう。


そう感じ取っているように見える母親はどこか悲しげで、


『嫌だから冷たくした、なんてありえないだろ』


観覧車で聞いた逢坂くんの言葉をまた思い出してしまうほど。


きっと彼女も、まだ伝えられていない思いがあるに違いない。


「それでなんだ、言いたいことがあるなら言ってみろ」


父親もまた、この壁のある関係はどうにかしたいと思っているのか、ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、今一番の真剣な表情を見せていた。


「…その前に、聖は?」


「聖? 聖なら今寝室で寝かしつけたところよ」


「そう」

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