3センチHERO

三枝くんと鈴村さんは血の繋がった本当の兄妹で、そのお母さんといえば三枝くんの育ての親なわけで。


ということは、鈴村さんと三枝くんのお母さんはどういう関係になるのだろう。


義理の母?


それとも親戚の人?


でも、どちらかと言えば親戚の人に近いか。


なんてどうでもいいようなことを考えているうちに、気付けば話はどんどん進んでいた。


「そう、紘くんだよ。いるんでしょ? 鳴海さんのポケットとかに」


言いながら鈴村さんは、私に向かって指差す。


何もかもを見透かされているような澄んだ目色で、嘘なんか付ける状況でもなく、無意識にポケットに手を入れてしまっている自分がいた。


だけどそのとき、ふと冷静にかえった脳の一部が、朝の出来事を思い出させる。


「あ、でも。確か今日は三枝くんを起こさないで来たから、多分いないはずなん…」


だけど、と言いかけて、ポケットに手を入れて気付く。


いつもと同じ、くすぐったい感覚がする。

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