3センチHERO

まさか、と思い、触れたものを取り出せば、


「紘!」


逢坂くんのそんな声がした。


「どうして、ここに?」


「どうしてって言われても、この部屋に入ったのはお前らだし…」


「そうじゃなくて…!」


いつの間にポケットに入っていたのか、ってことだよ。


言いたいことが上手く伝わらず、もどかしい思いになっていると、隣から逢坂くんが口を挟んだ。


「鳴海が紘の存在を知らなかったってことは、勝手に忍び込んできたんだろ? それがいつかって意味じゃねーの」


「あー、なるほど!」


彼の一言だけであっという間に理解した三枝くん。


さすが親友、以心伝心っていうやつか。


なんて場違いにも納得してみたり。


「目が覚めたら鳴海が着替えててさ、たまには驚かせてみたくなったから、こっそりブレザーに入ったんだよ」


「き、着替え……!?」


何気ない言葉に顔を赤く染めたのは、逢坂くんだけじゃない。


まさか、あのとき起きていたなんて。


声をかけてくれれば良かったのに…!

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