3センチHERO
「もう着いたぞ、部室」
「えっ、ああ…本当だね」
いつものテニス部部室の扉を開く彼に、苦笑いで返す。
「本当に大丈夫なのか? 今日、なんか変だけど…」
逢坂くんは不思議そうに私の顔を覗き込む。
二度聞かれるなんて、そんなにひどい表情していたのだろうか。
両頬を挟み込んで軽く叩く。
よし、と気合いを入れ直し、逢坂くんに笑顔で向き合う。
「大丈夫だよ。何度もごめんね、ありがとう」
「そ、そっか。ならいいんだ」
朝のことはもう忘れよう。
考えたって、きっと答えにはたどり着かないし、2人は2人で、何か事情があるんだ。
そう自分に言い聞かせ、私はお弁当を食べ始めた。